ビル掃除のときのパントマイム
第一の転機は、想像すると、アルバイトのビル掃除のときにパントマイムを実演して見せてくれた女性に出会ったことかな、と。そこで演劇というものが初めて視野に入ってくる。
たしかあのころは、ウェイターが嫌になってすぐやめて、ビル掃除。渋谷の昔のハチ公前で菜っ葉服のおばちゃんの面接を受けて、雑居ビルの地下一階に降りて、もう一つ降りて、そこでその女の子に出会った。
パントマイムってこういうふうにやるのよ、って見せてくれたら、モップや掃除道具のあるビルの地下室の空間が、まるで別世界になったんですね。歩いていないのに歩いていたり、見えない壁が現れたり。異空間がスッと立ち上がってきた。そこで演劇ってものがあるのを知ったわけだけど、でもパントマイムは喋らないから、ちょっと不便すぎないかな、と思ってね。
それで唯一、無試験で入れるアクターズスタジオという演劇学校に入ったんです。
だからやっぱりあのパントマイムの子と出会ったのが第一の転機かな。最初の予報通りに(笑)。あのときの子が岡山か広島へ公演で行ったときに、楽屋に訪ねてきてくれましたよ。あれは僕が19のとき以来ですから、何十年ぶりだったかなぁ。