「愛おしい人物なのかどうか」

イッセーさんの一人芝居が人気なのがわかる気がした。人間の変なところ、おかしいところを描写してもそれを嘲笑うのではなく、面白がりながら愛おしく思っている。だから観客は気分よく劇場をあとにできるのだろう。

――そう、それは僕が60歳になって、フリーになってから強く意識されたところですね。あのときは、自分が何をやってきたのかをそろそろ考える時期だったんで。やっぱりずっと一人芝居をやってきて、この時期になってはっきりと「愛おしい人物なのかどうか」というのが、言葉として浮かび上がってきましたね。

とにかく老化はすごいスピードでやってきますよ。何年か前、舞台からポンと飛び降りたら、カクッと膝が抜けてね、あれだけアルバイトの建築現場で鍛えた足が、って思いました。

そのころから始めたドイツの「ピラティス」という、骨格の歪みを整えるエクササイズを続けてて、舞台は大過なくつとめられています。

まだまだネタは無限にありますからね。あの舞台の二間二間の正方形の場所に一人立って、そこが一生の場所になるなんて、始めた当初は思わなかったですけどね。

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