駅の外を少し歩くだけでもチビりそう

もう一度バタついたのが、JFK空港で荷物を預け、出発までの間に競馬場へ寄ったとき。マンハッタン側からとは逆のアプローチで、行きも帰りも競馬場へはアケダクト・ノースコンデュイットアヴェニュー駅を利用することになった。

行きは降りるだけ(改札なし)。帰りについてはさきほどのケースで学習して、度数の残
ったメトロカードを持っていった。

なのに、競馬場側改札の機械が反応しない。何回やっても開かない。そして、そちら側に有人窓口などはない。駅員さんに申し出るには、駅南側の窓口まで行くしかない。

日本ならちょっとめんどくせえなくらいの話だが、最終レース後で陽も落ち、暗くなってきたクイーンズ南部はめちゃめちゃ怖いのである。他に人がいないのも怖いし、いたらいたでその人が怖いのである。

有人窓口まではホームの長さぶんだからせいぜい150mとかだと思うが、駅の外側をその距離歩くだけでもおしっこチビりそうな気分だった。

大げさなと思われるかもしれないが、それは世界有数の治安を誇る日本に住んでいるから思うこと。海外では、吸っている空気に恐怖成分が入っているのではと思うような場所がそれなりにある。

ちなみにメトロカードは単なる磁気エラーだったようで、駅員さんが交換してくれた。あれが無人の時間帯だったらと思うと気が遠くなる。

競馬の話を全然書いていないが、アケダクトの記憶というと、とにかく「改札」なのだ。

※本稿は、『世界の中心で馬に賭ける-海外競馬放浪記』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。


『世界の中心で馬に賭ける-海外競馬放浪記』好評発売中です

「自分がこれだけたくさん海外の競馬場に行くことになろうとは、当時全く考えていなかった。この本を書くにあたって改めて数えてみたところ、150近い競馬場を訪れていた。生きているうちに、少なくとも200場は超えようと思っている」(「はじまりは香港・沙田競馬場」本文より)。

グリーンチャンネルやBS11の競馬番組、ペーパーオーナーゲームの"赤本"『POGの達人』でおなじみの競馬評論家が、約30年をかけて訪れた、アジア、オーストラリア、中東、ヨーロッパ、アメリカの150近い競馬場の中から、記憶に残る63場を紹介。海外のG1が開催される憧れの競馬場から、1年に1日しか開催されない砂浜の競馬場、そして、今は存在しない廃止場・休止場まで--。馬と競馬を愛する全ての人に贈る、350枚の写真と共に綴る旅エッセイ。