最終的に、3711人の乗客乗員のうちおよそ2割が新型コロナに感染したダイヤモンド・プリンセス号。最初の感染者が判明したころ、船内で起きていたこととは(写真:PhotoAC)
豪華客船、ダイヤモンド・プリンセス号は2020年1月、横浜を出港しました。香港や台湾などを経由し、2月4日に再び横浜に戻る予定だったものの、その直前、香港で下船した中国人乗客が新型コロナウイルスに感染していたことが判明。4000人近い乗客乗員を乗せたまま、横浜港に停泊して約1か月にわたる検疫を余儀なくされました。船内では連日、乗客・乗員の感染が判明、最終的に感染者は712名、死者13人に。正体の分からない感染症に加え、巨大な密室に様々な国籍の人々が押し込められた状況下で起きていた事実を綴った『命のクルーズ』から、当時の混乱した状況を振り返ります。

感染者判明も、当初の船内は特に変わりはなかった

1月25日にダイヤモンド・プリンセスを下りた香港の男性が、新型コロナウイルスに感染していた―。

この事実を日本政府が把握したのは2月2日のことであった。未明に届いたIHR通報によって、情報がもたらされたのである。

WHO(世界保健機関)憲章に基づく国際保健規則(IHR=International Health Regulations)では、国際的な公衆衛生上の脅威となりうる感染症の情報は、関係各国で共有されることになっている。

ダイヤモンド・プリンセスは、那覇検疫所より仮検疫済証を交付されたあと、前日深夜に那覇港を出港し、洋上を航行していた。丸2日かけて太平洋をゆっくりと北上し、横浜港には4日朝の到着予定であった。

香港の保健当局は、プリンセス・クルーズ社にも下船客の感染情報を提供していたというが、重大情報が乗客に知らされることはなく、ダイヤモンド・プリンセスの船内はそれまでと比べこれといって何の変化もないように映った。