「人気、人気」と言われると購買意欲を喪失する客もいる

ちなみに、私がイタリアで衣料や宝石を売っていた頃は、「これが似合うのは、お客様みたいな雰囲気の方だけだと思います。さすが」というのが相手を喜ばせる殺し文句だった。

個性的であることが違和感を醸す社会とそうでない社会があるということを、こんな日常の些細なやりとりからも考えさせられる。

たとえば、我が子が学校でいじめられて家に帰ってきた場合、理由が子どもの個性に関わることだとしても、「なにか皆に嫌がられるようなことしたんじゃないの?」などと聞いてしまう親は結構いるのではないだろうか。その時点で子どもは、親が孤立した自分の味方についてくれるわけではなく、社会への適応と調和を望んでいることを自覚させられる。

どっちが正しい、悪いの問題ではない。要するに、日本は全体調和を社会の基盤とする国なので、無理に西洋式の個性の集合体的社会の実現に躍起になっても仕方がないのかもしれない。「一番人気」という言葉に販売促進効果があるのだとしたら、きっとそういうことなのだと思う。

とはいえ、日本はそれなりに広いし人口も多い。中には私のように、「人気、人気」と言われると逆に購買意欲を喪失する客もいるということを、販売員の方はぜひ念頭に置いていただければと思う。