「週刊誌には『ポスト田中みな実』の文字が躍る。『ポスト……。私はもう過去の人?』。会社員とはいえアナウンサーは人気商売。新旧交代は常なのです」(撮影:天日恵美子)
2014年にTBSを退社し、フリーアナウンサーとして活動している田中みな実さん。ここ数年は俳優業にも挑戦し、話題の作品に次々と出演。現在もドラマ『吉祥寺ルーザーズ』では個性的な元編集長役で注目を集めています。また、美容やファッションなど美意識の高いライフスタイルが同性に支持され、2019年に発売した写真集は60万部超えと異例の大ヒット。順風満帆に見える彼女ですが、仕事の上ではさまざまな葛藤があったそうです。(構成=村瀬素子 撮影=天日恵美子)

明確な目標を持ち突き進んできたけれど

このところ俳優業のオファーをいただくことが増えましたが、私にとっては芝居もバラエティ番組への出演も、雑誌の撮影も、すべてが愛すべき大切な仕事で優劣はありません。いただいた仕事の一つひとつを大切にして、誠実に、一所懸命に取り組んできた結果、今があると思っています。

30代になってからは、求めてもらえるのならあらゆる分野に挑戦したいと思うようになりました。昔はこうと決めたら一点集中型の頑なな性格で。大学進学も就職も、明確な目標を掲げてそこへ突き進み、他者の意見を聞き入れることはありませんでした。(笑)

大学2年のとき「TBSのアナウンサーになりたい」という目標を持ち、スクールにも入って気合は十分だったのですが、想像を超える狭き門にたじろぎました。私が内定をもらった年の倍率は4000倍。両親は「合格は難しいと思って、ほかの企業も視野に入れておきなさい」と言い、他社のエントリーシートを用意させられました。いま振り返っても、内定をいただけたのは奇跡としか言いようがありません。

難関を突破し、入社。しかし本当の試練はそこからでした。アナウンサー研修では、発声、言葉のアクセント、語尾の上げ下げなど、細かな指導を受けながら、正しい日本語と話し方を叩きこまれます。画面に映るようになると、言葉遣いや見え方を社内の人はもちろん、視聴者の方にもご指摘いただき、気が抜けない日々が続きました。

グルメリポートでは、お箸の持ち方が正しいのは当たり前で、箸のどのあたりを持つと美しく見えるのかを、放送を観返して研究したり。また、会社員として過ごしたTBS時代は、業務以外の、社会人としての教養も、厳しくも温かく教えられ、それが礎となっています。