初演技を終えた瞬間手がぶるぶる震えて

演技のオファーを初めて受けたのは19年、ドラマ『絶対正義』。それまで芝居経験はゼロに等しく、無謀だと一度はお断りしたものの、「食わず嫌いせずに、一度やってみたら?」との当時の事務所社長の後押しもあって挑戦することに。撮影前夜まで、急病になったら断れるだろうかと真剣に考えました。(笑)

とはいえ、撮影が始まれば、私もほかの役者陣と変わらない俳優の一人。初心者マークをつけるわけにもいかず、同じ土俵で肩を並べて芝居をします。ド緊張のなか迎えたクランクインの最初のシーンが、主演の山口紗弥加さんや美村里江さんなど錚々たる女優さんたちを前に、資料をテーブルに叩きつけて怒鳴り散らすというもので……。

いま思い出しても吐き気がするほどのプレッシャーでした。本番中はアドレナリンが出ていたのか緊張を感じる暇もありませんでしたが、カットがかかったとたんに手の震えが止まらなかったのを覚えています。

俳優業に限らずどんな仕事も、オファーをくださる方々の期待を裏切ることはしたくないんです。作り手の意図をできる限り汲み取って納得のいくものを提供したいと思っています。

現在放映中のドラマ『吉祥寺ルーザーズ』で、元女性ファッション誌の編集長、大庭桜を演じている田中さん ⓒ「吉祥寺ルーザーズ」製作委員会

もう少しいい加減に生きられたら楽なのかもしれません。でも、一つひとつの仕事を丁寧に妥協なくやってきたから今があって、次にも繋がっているという自負があるから手は抜けないのです。

とはいえ、芝居に関しては手探りの状態で、手応えなんてありません。監督がOKを出しても自身が納得できていなかったり、何が正解なのかがわからなくなったり、大事なシーンで感情を表に出せなかったり。入念に役作りをしても、新しい作品に入れば振り出しに戻って、ゼロから構築する作業の繰り返し。わからなくて、悔しくて、だから面白いと感じているのかもしれません。