初戦を迎えて
五輪初戦まであと2日。試合会場となる福島県営あづま球場の近くでは、ボランティアの方や五輪関係者の方を多く見かけたり、セキュリティーも厳しくなっていたりして、「いよいよ始まるな」と気持ちが引き締まりました。
初戦を前にした全体ミーティングでは、金メダルという我々の目標に向け、選手の前で話をしました。
まずは、「シドニー大会(2000年)で初めてプロが参加してから、金メダルが取れていない」という現実を伝えました。それだけ「五輪が特別な、難しい大会」であることを知ってほしかったからです。
そして難しい大会を勝ち抜くために、改めて「ここにいる選手、スタッフが皆で結束して一つになり、戦おう。日本球界のトップチームとして、侍ジャパンの誇りを胸に皆で戦っていこう」と呼びかけました。選手は皆、引き締まったいい表情でした。
泣いても笑っても決勝戦まで10日余り。我々の戦いが始まりました。
○日本4 ― 3ドミニカ共和国
※本稿は、『活かして勝つ-金メダルをつかむチーム作り』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『活かして勝つ-金メダルをつかむチーム作り』(著:稲葉篤紀/中央公論新社)
2021年に開催された東京オリンピックで、野球日本代表が37年ぶりの金メダルを獲得した。五輪監督を務めた氏は、就任以来どのように侍ジャパンのチーム作りに取り組んできたのか。その舞台裏や秘蔵エピソードを明かす。