初戦を迎えて

五輪初戦まであと2日。試合会場となる福島県営あづま球場の近くでは、ボランティアの方や五輪関係者の方を多く見かけたり、セキュリティーも厳しくなっていたりして、「いよいよ始まるな」と気持ちが引き締まりました。

オープニングラウンドA組、ドミニカ戦で先発した山本由伸。6回を無失点で抑える好投を見せた。福島県営あづま球場で。2021年7月28日(写真提供:読売新聞社)

初戦を前にした全体ミーティングでは、金メダルという我々の目標に向け、選手の前で話をしました。

まずは、「シドニー大会(2000年)で初めてプロが参加してから、金メダルが取れていない」という現実を伝えました。それだけ「五輪が特別な、難しい大会」であることを知ってほしかったからです。

そして難しい大会を勝ち抜くために、改めて「ここにいる選手、スタッフが皆で結束して一つになり、戦おう。日本球界のトップチームとして、侍ジャパンの誇りを胸に皆で戦っていこう」と呼びかけました。選手は皆、引き締まったいい表情でした。

泣いても笑っても決勝戦まで10日余り。我々の戦いが始まりました。

○日本4 ― 3ドミニカ共和国

※本稿は、『活かして勝つ-金メダルをつかむチーム作り』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

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『活かして勝つ-金メダルをつかむチーム作り』(著:稲葉篤紀/中央公論新社)

2021年に開催された東京オリンピックで、野球日本代表が37年ぶりの金メダルを獲得した。五輪監督を務めた氏は、就任以来どのように侍ジャパンのチーム作りに取り組んできたのか。その舞台裏や秘蔵エピソードを明かす。