攻守のキーマン・柳田に起きたアクシデント

一方、同じタイミングで緊急事態が発生しました。攻守のキーマンである柳田悠岐(ソフトバンク)が右脇腹を痛め、フルスイングができない状態であることが判明しました。合宿直前に行われたオールスターゲームで痛めました。

『活かして勝つー金メダルをつかむチーム作り』(著:稲葉篤紀/中央公論新社)

脇腹は、重症化すれば五輪後のシーズンを棒に振る危険もあります。それどころか、選手生命をも失いかねない箇所です。無理はさせられないと思いました。

一方で五輪への思いは人一倍強い選手ですから、非常に迷いました。

本番の初戦まで1週間しかありません。外野担当の清水コーチを中心に、首脳陣全員で話し合いを重ねました。

「野手は13人しかいない。その中でケガ人が一人いたらチームとして機能しないのではないか」

「1週間でしっかり振れるくらいに回復するかどうかは賭けだな」

数日間は別メニューの練習をさせつつ、回復具合を見ようという結論になりました。

今回選んだ外野手の中では、センターを本職とするのは柳田のみでした。ライトの鈴木誠也(広島)に、清水コーチからセンターでの先発の可能性もあることを伝えると同時に、回復が見込めない可能性も考慮して、合宿に来ていないほかの外野手候補を挙げる作業も進めました。