イラスト:小林マキ
加齢とともに、睡眠の質は低下していきます。「朝、起きたときになんだかだるくて」「頭が重くてものごとに集中できない」など、体調や気分が優れない毎日はつらいもの。そこで、快眠のコツを専門家にアドバイスしてもらいました(イラスト/小林マキ 取材・文・構成/葛西由恵《インパクト》 デザイン/米山和子《プッシュ》)

加齢とともに
睡眠ホルモンが減少

厚生労働省が公表した2021年「健康実態調査結果の報告」によると、40歳以上の日本人の約9割が「寝付きに時間がかかった」「夜間、睡眠途中に目が覚めて困った」「早く目が覚め、それ以上眠れなかった」など、睡眠に関して何らかの不満を持っていることが明らかになっています。

「加齢により眠りが浅くなるのは、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌量が減少するからです。メラトニンは、成長期の10代をピークに下降を続け、40代で6分の1に、それ以降は10分の1まで減少していきます」

睡眠のメカニズムをそう説明するのは、一般社団法人日本栄養睡眠改善協会理事長の村井美月先生です。メラトニンの減少により、寝付きが悪くなるとともに、深く眠れなくなるのだそう。

「歳を重ねると体内時計のバランスが崩れ、自律神経失調症になりやすくなることも、睡眠リズムが乱れる要因です」(村井先生 以下同)

加えて、新型コロナウイルス感染症の影響で外出や運動の機会が減り、生活リズムにメリハリがなくなっていることも睡眠を妨げていると指摘します。

「不眠や睡眠の質の低下が長引くと疲労がたまり、心身のバランスを崩しやすくなり、うつ病を招くこともあります」

また、睡眠不足はインスリンの働きや分泌を低下させ、糖尿病のリスクを高めるほか、高血圧症にもなりやすくなるといいますから、軽視はできません。

「脳の疲労回復にも悪影響を与えます。認知症の原因とされる脳内のアミロイドβは、通常眠っている間に老廃物として排出されるのですが、睡眠が十分とれていないとたまりやすくなり、アルツハイマー型認知症のリスクを高めるといわれています」