ほかにも不動産業界用語とその解説がふんだんに盛り込まれている。「両手」とは不動産業者が物件の売り主と買い主の両方から手数料を受け取ること。「ペアローン」とは夫婦で所有する住宅のローンを夫婦それぞれが組み、お互いの連帯保証人になることである。

ただし、そんな解説に終始しないのが、このドラマが並みのお仕事ドラマとは違う点。ライアー永瀬がウソをつけなくなってしまう。石田宅の敷地内にあった古い祠を整地のためにぶっ壊したら、なぜかバカが付くほど正直者になってしまったのだ。

アパート経営にリスクがないと信じ込んでいた石田に対しては「リスクなんて当然あるに決まってるじゃないですか」と言い放つ。敷金・礼金目当てで入居者を次々と追い出していたアパート経営者・松崎誠也(宮川一朗太)には「クソオーナー」と毒づく。社内でも同じで、上司の営業部長・大河真澄(長谷川忍)から飲みに誘われると、「激安居酒屋で激安ハイボールおごるくらいで恩着せがましいんだよ」と、きっぱり断る。

痛快である。正直に生きることが許されている人なんて、まずいないからだ。サラリーマンなら、軽蔑している上司の指示にも従わなくてはならない。大嫌いな同僚に笑顔で接しなくてはならないときもある。

サラリーマン以外だって一緒。思ったことをそのまま口にしていたら、変わり者扱いされるのがオチだ。このドラマにおいても裏表のない誠実な新入社員・月下咲良(福原遥)が解雇されようとしている。正直でいるのは難しい。不可能に近い。それを永瀬は実行している。面白いはずである。