不動産会社の営業マン「ライアー永瀬」
すべての人が関わるものでありながら、大半の人は詳しくないのが不動産。これをテーマにしたことが成功した一因に違いない。
NHKの連続ドラマ『正直不動産』(火曜午後10時)のことである。
主人公は登坂不動産に勤務する営業マンの永瀬財地(山下智久)。売上高1位の花形社員ながら、社内で「ライアー永瀬」と陰口を叩かれていた。自分の成績を伸ばすことしか頭になく、客にウソを並べ立てていたからだ。
第1話では和菓子店主の石田努(山崎努〈「崎」は正しくはたつさき〉)にアパートのサブリース契約を結ばせた。サブリースとは、不動産会社がオーナーからアパートなどの物件を借り上げ、入居者に転貸することなのだという。知らなかった。やっぱり不動産は分からないことだらけだ。
永瀬の会社がアパートを一括で借り上げてくれる期間は30年。入居率に関係なく毎月決まった家賃が受け取れる。入居者集めも管理も永瀬の会社がやってくれる。さらに4年目以降は2年ごとに会社と石田が家賃について協議し、原則的に3%上げてくれる。至れり尽くせりだ。
もっとも、それはライアー永瀬による説明に過ぎない。何年かしてアパートの老朽化が進むと、家賃は下げざるを得なくなる。「上げる」というのはあくまで原則論だった。永瀬の会社が30年一括で借り上げてくれるというのも原則。契約書をよく読むと「中途解約も可能」と書かれていた。
永瀬の会社はいつでも逃げられる訳で、損をする恐れはないに等しい。一方、アパートの老朽化が進み、入居者が集まらなくなろうが、石田はローンを払い続けなくてはならない。契約には覚悟が必要なのだ。