練習量ではなく、分析力が重要になる

近年のスポーツはあらゆるものがデータ化され、高度な分析をすることが当たり前になりました。2012年のロンドン五輪と、2016年のリオ五輪との大きな違いは、ロンドンのときにいなかったアナリストが、リオのときには多くの国にいたこと。

日本チームもデータを解析するためのアナリストを帯同し、選手村とは別に作られたジャパンハウスと呼ばれる拠点には、パソコンがずらりと並んだアナリスト用の部屋が設けられていました。

選手たちがタブレットを持ってその部屋を訪れ、対戦相手を伝えると、その選手を分析したデータがもらえるようになっていました。チームスポーツであれば、1回戦、2回戦と試合が終わるたびに、次の対戦チームのデータが監督に届けられていました。勝つために相手を分析することがとても重要だというのがわかるでしょう。

対戦相手、ライバルチームの分析は練習時間を増やさなくてもできることの一つです。プロのアナリストのような分析や、あらゆるプレーのデータ化をすることはできないとは思いますが、相手の強みや弱みを発見するのはそれほど難しいことではないはずです。そのうえで、試合の戦術を練るなど、対策用の練習を行えば、勝つ確率を上げることができるでしょう。

トップアスリートたちの良いプレーの動画を観ることも、競技レベルの向上に繋がります。指導者は学生たちに対してスポーツに関する動きを理屈で説明しがちです。大人に対する運動指導は理屈で説明しないと効果が上がらない面があるのは事実ですが、子どもは違います。

子どもは動きを真似して習得していくのが得意です。野球選手の投球フォームやバッティングフォーム、サッカー選手やバスケットボール選手のドリブルやフェイント、テニス選手のサーブなどをよく真似していますし、そこから自然に動作を習得しています。

高校生はともかく、中学生や小学生に「肘をこのタイミングで曲げて、膝はこの方向に向けて、そしてこの筋肉に力を入れながら……」などと説明しても、それを正しく認識して実際の動きに結びつけるのは難しいことがあります。

一方、良いプレーを観たときにそれを自分のプレーに活かす能力は、若ければ若いほどあります。動画鑑賞であれば、体の負担は増えませんし、息抜きにもなります。トップアスリートのプレーを観る機会を設ける。これもとても良い練習です。