伝統美は大相撲の力
新しく審判となった粂川親方(元小結・琴稲妻)は、今場所は何度も物言いの説明をしていたが、短い説明なのでその口調の魅力が出ないのが残念。大相撲放送の時は、しみじみと諭すような口調で、その声と口調で説教をされたら、「私が悪うございました」と土下座してしまうと思いながら聞いていた。
逆に、審判をしていた親方が放送の解説者として登場した。
9日目に登場した高田川親方(元関脇・安芸乃島)は力士の時、金星16個を獲得したことで有名だ。弟子の指導について、「いま、パワハラとかで愛のムチの指導ができない。(力士は)自分で戦って、自分で切り開いていくしかないのです」と語っていた。
相撲部屋での親方の指導、弟子の鍛え方も変わっていくのだろう。
しかし、変わってほしくないものもある。かなり前だが国技館に相撲を見に行った時、会場に入った外国人の女性二人が「ワァオオッ!」と言って、土俵、行司の姿、力士、電光掲示板の文字という異空間の雰囲気に騒ぎ出し、2階席の通路に立ち尽くしてしまったのである。私の後ろにいたオッサンが「見えないぞ、座れ!」と何度も叫んだが、日本語が通じず、女性たちには応援の声だと誤解されていると私は思った。
横綱の土俵入り、力士の髷、化粧廻し、行司の装束などなど、伝統美は大相撲の力だ。混戦になろうとも、鍛え方が変わろうとも、その伝統美は変えてほしくない。
話は今場所に戻るが、5日目、37歳の玉鷲は通算連続出場を1426回として元関脇・高見山を抜いて歴代4位となった。今場所も若々しくて9勝6敗と勝ち越した。
弓の動きの切れがいい弓取式の聡ノ富士は45歳である。相撲界では高齢になる力士が活躍していると、私は励みになり、その姿を見ると拝みたくなる。弓取式は放送時間内に映らないことも多いが、たまにテレビ画面に映ると拝んでいる。もちろん玉鷲のことも15日間「頑張って」と拝んできた。来場所も拝むつもりである。