バレエを始めたきっかけは「痩せる」ため

かくいう私は、「バランスよく痩せるならバレエよ」と仕事の先輩に勧められ、水泳のために通っていたスポーツクラブのバレエクラスに顔を出すようになった。

バレエへの憧れもなかったので、それなりの年齢の女性たちがレオタードに短いスケスケのスカート、七五三みたいなピンクのタイツを穿く姿にギョッとした。「痩せるため」と割り切り、アディダスのスポーツウエア姿で参加。しかし周囲の熱心な友人たちに導かれ、やがてレオタードを着るようになり、トウシューズを履き、毎年、発表会に出る、という大人バレエのディープなコースを歩いている。

当初の「痩せる」という目的は見事に達成した。スタジオの鏡に映った自分の姿にショックを受け、間食をやめて食事内容も見直した。筋肉量が増え、1年もしないうちに体重が15キロ減っただけでなく、猫背だった姿勢がまっすぐに。

そして、「年齢とともに背が縮んでいくことはあるけど、あなた逆に伸びてない?」と周囲から言われるようになった。ジャンプの負荷で骨が強くなり、骨量も実年齢の平均よりかなり多い。バレエを始める前と比べると、別人のような見た目だと旧友たちは言う。

メンタルにも好影響だった。子育ての悩み、難病やがんの闘病など、人生で経験する数々の試練を前向きに乗り越えられたのは、生活のなかにバレエがあったおかげだと思う。

筋肉の働き方と開脚の仕組みなど、医療記者として解剖学への興味が深まったことものめり込んだ理由の一つ。「もっときれいに回りたい」「つま先を伸ばしたい」と、課題は次から次へと湧いてくる。

年齢やバックグラウンドが異なる仲間と旧知のように語り合えるのは、バレエという共通の話題があればこそ。「私たち、この年齢で青春よね」と互いに笑い、励まし合える仲間に恵まれたことは何よりの収穫で、私にとってバレエは心と体の両面に効く最高の薬だ。