発表会で『コッペリア』の〈時の踊り〉を踊る松井さん。着ることに抵抗があった衣装も「だんだん、みんなで着れば怖くない、という気持ちに」(写真提供:松井さん)

歳にかかわらず上達できるから嬉しい

松井眞紀子さん(65歳)は夫の転勤で神奈川県、福岡県、兵庫県……と全国を転々としながら、常にその地でスタジオを探して通ってきた。今年で25年目になる。多いときは週に5日レッスンを受けていたこともあるというが、最近は義母の介護のため、レッスンを休むこともしばしば。

でも、「子どもの頃、習いたくてもできなかったことが、大人になってできるのが嬉しくて。自分が好きなことを続けているからか、人にも優しくなれる気がします」と、ストレスを感じることはないという。

「バレエにはきちんとした型があり、そこから少しでも外れると、どこかおかしな動きになってしまう。ところが、その型ができるようになればいくつであっても上手になっていく。難しいから、少しでもできたときの喜びが大きいんです」と話す。

松井さんは最近、年齢にかかわらずバレエは上達するということを実感している。

「基礎を見直したら立ち方が変わり、片脚でつま先立ちをしたときに、以前よりグラつきにくくなったんです。家でも洗面台の前でバランスをとってみたり、かかとの上げ下げをしたり。手の指、爪の先が背中から伸びていく感覚もわかるように。年齢は上がったけど、この2、3年がいままでで一番成長しているように思います」