少女の頃に憧れた衣装へのときめき

コロナ禍により、いまは多くのバレエスタジオがオンラインレッスンに対応するようになった。近くにスタジオがない人はもちろん、時間や交通費を節約したい人にもメリットが大きい。

吉田美弥子さん(仮名・55歳)は「スタジオまで片道1時間、交通費が往復2000円くらいかかっていたので、オンラインに切り替えました」と話す。

「スタジオに通っていたときは人間関係で気を使い、レッスンに集中できないこともあったのですが、オンラインではすっぴん、ノーマスクで参加できる。終わったらすぐにレッスン着を洗濯できるし、疲れた体をお風呂で癒やせるのも嬉しい。浮いた交通費の分で、レッスン回数をさらに増やしました」と意外なメリットも教えてくれた。

発表会への参加を考えていなければ、レッスン代は月1万円程度が相場。服装もスタジオの指定がない限り、Tシャツにスパッツ、靴下で参加できる。バレエ用品店では、大人が抵抗なく着られる袖付きや露出の少ないデザインのレオタードが多数揃う。レオタードに抵抗感があった私も、実際に着てみると動きやすく、姿勢のチェックもしやすいことを知った。

前出の松井さんは、発表会で着る衣装もバレエの醍醐味の一つではないか、と話す。

「白いチュチュを着ることになったときは、子どもの頃に憧れた衣装そのもので、それはもう、ときめきました。次はどんな色やデザインの衣装が着られるかな、と毎回楽しみなんです」

もし続けられそうなら、一足2000円程度の布製のバレエシューズを買うといい。多くの人がイメージするつま先で立つトウシューズはいきなり履けるものではなく、ある程度の経験を積んでからで十分だ。

取材に応じてくれた方々は、バレエとの出合い方もつきあい方も違う。ただ共通していたのは、実年齢より若々しく生き生きして見えたということ。「バレエをしていなかった自分を想像すると、その差は大きいと思う」と口々に言う。「体が動く限り続けたい」と目を輝かせる彼女たちの日常に、不満や退屈を感じる暇はなさそうだ。