すごく幸せな時間
話を大吾に戻すと、妻は授かった子どもをとにかく大切に育てていました。
製薬会社で微生物の研究をしていたこともあり、哺乳瓶でミルクを作るときは、傍から見ると『何かの実験をしている人』に見えるほど、やりすぎなくらいに殺菌をしていました。大吾によると、そこまで殺菌する必要はないという説が、いまではあるみたいです。
この頃の妻は、大吾を抱っこしながら、会社から帰宅する私のことを毎日迎えに来てくれていました。会社を出るときに妻に〈帰るコール〉をすると、時間を見計らって、駅と家との中間くらいの場所で待ってくれているのです。そこから家族3人で、今日あった出来事などを話しながら帰っていました。
親と同居していたこともあり、家に1秒でもいたくなかったという説もあるかもしれませんが、理由はともかく、私にとってすごく幸せな時間でした。
会社の同僚からは、「結婚してから付き合いが悪くなったなあ」とからかわれましたが、「子どもが可愛くってね」とかわして、まっすぐ帰宅していました(笑)。