カフェインの作用

睡眠の研究は約100年前に始まりました。1909年、愛知医学校(現・名古屋大学医学部)の石森國臣は、イヌの実験から初めて睡眠物質の存在を示しました。

この実験では、眠らせないようにしたイヌから脳脊髄液を抽出し、その液を別の犬に注射しました。すると、犬は睡眠状態を示しました。一方、対照の犬の脳から抽出した抽出液では睡眠は観察できませんでした。

カフェインには、覚醒作用のほか、血管拡張作用や利尿作用、胃酸の分泌促進、交感神経を刺激する作用などが知られています。(写真提供:Photo AC)

起き続けていると必ず眠くなるのは、眠りを促す睡眠物質が脳の神経細胞に結合し、蓄積されていくためです。睡眠物質とは、脳内に存在する眠気や覚醒に関わる物質で、30種類以上が発見されました。

そのうちのひとつに、プロスタグランジンD2というものがあります。プロスタグランジンは、 脂肪酸から合成される脂質です。生体中にいくつかの種類があり、睡眠の他、発熱や痛みなどさまざまな脳機能における役割を担っています。

プロスタグランジンD2は、脳のくも膜で生成し、睡眠物質であるアデノシンの分泌を促します。アデノシンは、ATPが分解されてできます。徹夜すると増え、眠ると減ることもわかっています。

アデノシンは受容体に結合すると、視床下部にある睡眠中枢を活性化させ、脳に睡眠を誘発します。また、ヒスタミンという物質の放出を抑えます。

神経伝達物質であるヒスタミンは脳に放出されると目が覚めます。鼻水やくしゃみを引き起こす物質でもあり、風邪薬には抗ヒスタミン成分が配合されています。風邪薬を飲むと眠くなるのはヒスタミンの分泌を抑えるためです。

カフェインは、血液脳関門を容易に通過します。アデノシンと構造がよく似ているため、アデノシンより先にアデノシン受容体に結合してしまいます。すると、アデノシンの働きが抑えられ、眠気が覚めるのです。

カフェインは、覚醒作用のほか、血管拡張作用や利尿作用、胃酸の分泌促進、交感神経を刺激する作用などが知られています。 

カフェインの過剰摂取は、カフェイン依存症に陥る可能性があり、カフェイン中毒で吐き気や嘔吐、手足のしびれや動悸などの症状が出ることがあります

妊婦がコーヒーを禁止されるのは、カフェインが胎盤を簡単に通過でき、胎児に影響が出る可能性があるからです。同様に、小さな子供に安易にエナジードリンクや缶コーヒーを与えないようにしましょう。