飲むと眠気が覚めるとよく言われるコーヒー。しかし科学的にその理由が解明されたのは21世紀に入ってからだそうです(写真提供:Photo AC)
「体にいい」「悪い」で語られがちな食べもの。しかし、生物や食品化学などの分野に詳しく、明治学院大学や東洋大学で非常勤講師を務めるサイエンスライター・佐藤成美さんは「多くの人が時代背景や健康ブームに惑わされ、栄養学的に正しい事実をわかっているようでわかっていない」と感じているそうです。たとえば「コーヒーを飲めば眠気が覚める」とよく言われますが、科学的にその理由が解明されたのは21世紀に入ってからだそうで――。

睡眠とコーヒー

眠気覚ましにコーヒーは定番。コーヒーなどカフェインを含む飲みものや食べものを摂取すると、頭がさえ、眠気が覚める効果があることは、よく知られています。

カフェインはコーヒーノキ、チャノキ、カカオなどの植物に含まれています。 

コーヒー1杯(100ミリリットル)には60ミリグラムくらいのカフェインが含まれています。紅茶や緑茶、ココアなどのカフェイン量は、コーヒーより少なく紅茶や緑茶はその2分の1から3分の1程度です。

緑茶でも玉露の場合はかなりカフェイン量が多く、1杯(60ミリリットル)あたり90~100ミリグラムものカフェインを含みます。玉露に多いのはカフェインを多く含む若芽を用いるためです。

エナジードリンクには、コーヒーや紅茶よりもたくさんカフェインを含む製品もあります。また、カフェインは医薬品としても使われています。

カフェインは苦味成分として知られます。コーヒーには苦味成分が数種類あり、カフェインだけがコーヒーの苦味ではないようです。緑茶では、お茶特有のさわやかな苦味をもたらします。

カフェインが脳にある受容体に結合することで眠気が覚めることを筑波大学などの研究チームが報告(写真提供:Photo AC)

夜になると眠くなり、朝になると目が覚めるのは当たり前だと思うかもしれませんが、どうして眠くなるのかといった睡眠のメカニズムは解明されていないことがたくさんあります。

また、カフェインでなぜ眠気が覚めるのかも長い間不明でしたが、2005年に筑波大学などの研究チームによる研究結果が報告されました。カフェインが脳にある受容体に結合すると、睡眠を促すアデノシンという物質の作用が抑えられ眠気が覚めるということがわかったのです。