なぜ彼らは転身のプロセスに取り組むことが出来たのか

私たちは、途中で転身するのが難しいと感じたなら、いったん小休止を取って別の世界を経験してみるという手もある。そうすることで、本質的でないことにこだわっている自分が見えてくるかもしれない。

「2人の転身においては目標を達成することよりも、そこに至るプロセスが大事であることを語っているようで興味深い」(写真提供:PhotoAC)

今泉五段の師匠で、投資家でもある桐谷広人は、介護の仕事によって今泉五段のカドが取れて将棋に好影響を与えたと語っている。

異なる立場に移行して仕事を変更する場合を「A→B」型とすれば、この2人の転身形態としては「A→B→A」型だと言える。

私たちは年齢を経ながら取り組むことは変化していくが、途中でやり残したものも多い。以前の仕事で獲得したスキルや経験をもとに再び似たような仕事に取り組む場合や、子どもの頃に関心があったことや若い時にやり残したことを中高年以降になって再びやり始めるという形の転身がこれだ。

2人は、元の仕事とは対極的と思える仕事をすることによって、新たな自分を発見して、幅広い視野を持ち、転身のプロセスに取り組むことができたのではないだろうか。

梅原は、社会派ブロガーちきりんとの対談の中で、「すごいプレーって何かって言うと、今言ったプロセスや考え方が、戦い方ににじみ出ているプレーのことだと思うんです」と発言しているが、2人の転身においては目標を達成することよりも、そこに至るプロセスが大事であることを語っているようで興味深い(『悩みどころと逃げどころ』)。