白い毛色のウマは、特別で高貴なイメージがありますが、元から白色であることは稀です。多くは葦毛の馬と呼ばれる灰色のウマが、年老いて白色になっているとのこと(写真提供:photoAC)
歳を取ることについて、どちらかというとマイナスなイメージを持っている方は多いのでは。しかし「老いることは、生物が進化の歴史の中で磨いてきた戦略である」と、静岡大学大学院農学研究科教授の稲垣先生は話します。人気エッセイストとして、著書も多数執筆している先生が、注目する生きものを取り上げながら、その「老い」について考えてきます。今回取り上げるのは、「ウマ」です。ウマの中でも、特に白馬に高貴なイメージを持つ方も多いのでは。競走馬であるソダシは、史上初めて白毛馬のGI優勝を飾るなど、現在も大活躍中。ほれぼれするような白毛ですが、地毛が白色の馬はとても珍しいとのこと。実際、白馬の多くは葦毛馬が年老いた姿ですが、年を重ねているからこその魅力とは。

王子さまが乗っている白馬は、お年寄りのウマ

王子さまは白馬に乗って現れる。女の子であれば誰でも、一度はおとぎ話の白馬の王子さまを夢見ることだろう。

ウマの毛色は、茶褐色のものが多い。白い毛色の馬は、特別で高貴なイメージがある。

この白馬は、年老いたウマである。葦毛(あしげ)の馬と呼ばれる灰色のウマがいる。この葦毛が、年を取ると白くなるのである。

高貴な人の馬車を引いたり、競馬の誘導をしたりする白いウマも、もともとは葦毛のウマである。中には、生まれつき白い突然変異のウマもいるが、それはときどき、白いカラスや白いタヌキが目撃されるのと同じくらい、とても珍しい。

私たちの髪が白くなるように、葦毛の馬も年を取ると、白くなる。年を取って、すっかり毛が白くなってしまったウマこそが、白馬なのだ。

大切な馬車を引いたり、誘導したりするのは、白馬の見た目の美しさだけでなく、経験を積んで落ち着いたウマであるということもあるのだろう。