細田「紆余曲折だったから、負けた人の気持ちが分かる」

岩崎 そこでジブリに入っちゃってたら、きっといまの監督はない。

細田 本当にね。いま思うととてもありがたい言葉なのに、そのときは落ちたことが受け入れられなかった。しかも、そういうことがあったにもかかわらず、それからあとに、もう一度チャンスが訪れたんですよ。自分で言うようなことではないけど、当初、『ハウルの動く城』の監督は僕の予定だった。

岩崎・清水 ええーっ?

細田 でも、どうしてもうまくいかなくて。途中からやっぱり宮崎さんが監督をすることになりました。就職試験で落ちて、それでも声がかかって映画をつくれるチャンスをもらったのに、2回目もやっぱりダメだった。

清水 それはつらい。

細田 そのときは「もう終わりだ」みたいに思いました。でもやっぱりね、それでも映画をつくらずにはいられなかった、というか。なんとかいまに至ってるわけです。なんの話をお2人に聞かせてるんだろう、と思いながら話してますけど(笑)、本当に僕は紆余曲折なんですよ。

清水 だから、人に優しいのかな。

細田 優しいかどうかはわかんない(笑)。でも、負けた人間の気持ちはわかるつもりです。やっぱり何度も負けてきましたから。そのぶん鍛えられるし、それでもどれだけ情熱を……、

清水 持ち続けられるかってことですよね。負けちゃった瞬間にはわからないことだから。