左から細田守さん、岩崎良美さん、清水ミチコさん(撮影:清水朝子)
2022年7月8日の『金曜ロードショー』では、昨年興行収入66億円の大ヒットを記録した細田守監督の『竜とそばかすの姫』が地上波初放送。幼い頃に母を亡くした主人公の女子高生・すずの母親代わりとして登場する合唱隊のメンバーを演じた、清水ミチコさん、岩崎良美さんと細田監督が映画公開前に語りあった『竜とそばかすの姫』の裏話とは…?『婦人公論』2021年7月27日号鼎談記事を再配信します。


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作品を発表するごとに国内外で評価を高めてきたアニメーション映画監督の細田守さん。その最新作『竜とそばかすの姫』に声優として出演する清水ミチコさんが、共に声優を演じた岩崎良美さんと映画制作真っ只中の細田監督に迫ります。すると監督、実はスタジオジブリを受験して落ちたり、大きなチャンスを逃してしまったりと、紆余曲折のある人生を歩まれてきたことが分かり――(撮影=清水朝子 構成=本誌編集部)

<前編よりつづく

フラッと入った教会で出会った歌曲を映画に

岩崎 私たちはセリフ録りとは別に、歌を録るっていう大きなミッションがあったじゃないですか。

清水 難しいイタリアの曲。

岩崎 最初に楽譜を渡されたとき、気持ちが焦って「歌曲を1人で練習するのも難しいから、リハーサルのスケジュールを取ってもらえますか」なんてマネージャーさんにお願いしてたんですよ。そしたら森山さんが、スローテンポに編集した練習用テープを送ってくださって。あれで、5人にものすごく団結力が生まれたっていうか。

細田 さすがリーダー役なだけのことはありますね。

清水 それにしてもよく見つけましたね、あの歌曲。

細田 「いざ、リラを奏でて歌わん(Alle psallite cum luya)」はもともとね、僕がフラッと入った函館の教会で、聖歌隊が歌ってたんですよ。

清水 へーっ。

細田 いい曲だなと思って、そこにいた指導者みたいなおじさんに、「なんて曲ですか」って楽譜を見せてもらったんです。

清水 アニメーションの監督がすごいと思うのは、絵が描けるばかりかストーリーが書けて、いいセリフが書けて、そのうえ音楽のセンスも問われる。ちなみに、監督が一番好きな音楽ってなんですか。

細田 すぐ聴きたくなるのは、グレン・グールドによる「ゴルトベルク変奏曲」の1981年盤ですね。

清水 あははは。「ああ、あれね」って言ってみたい。(笑)