励ますつもりで発した言葉がかえって患者をナーバスにしてしまうこともあると思います。私に限って言えば、闘病中はどうしても卑屈になってしまいがちで、たとえば「頑張ってね」という声かけに対しては、「言われなくても頑張ってるんですけど」と、反発を覚えたことでしょう。そもそも移ろいやすい患者の心にフィットした言葉を投げかけるのは、難しいことだと思います。

だからといって「自分は無力だ」などと、ご家族が暗い気持ちになってしまっては元も子もありません。できることは言葉以外にもあると思います。たとえば、じっくり話を聞くこと。ただ聞いてもらえるだけで救われる人も多いのではないでしょうか。

 

家族も適度にストレスを発散して

共倒れにならないよう、家族の方自身が適度にストレスを発散する、あるいは無理をしないなど、自己管理に努めるのも、実は大切なことだと思います。

経済的なことが不安材料だというケースもあるでしょう。私にしても、治療にいくらかかるのかということが気がかりでした。たまたまがん特約つきの生命保険に入っていたので、手術費や入院代はカバーすることができたのですが、治療は続きますし、それだけでは済みません。

私の場合、乳房を全摘したあと新たに揃えた下着代や、これさえあれば大浴場にも堂々と入れると購入したニップル(接着性の人工乳頭)代など、保険のきかない出費も嵩みます。お金については、ある程度率直に話し合っておくと安心かもしれません。

いつまた再発するかもしれないという不安はあります。でも明日のことは誰にもわからない。結局のところ、人は今日という日を精一杯生きることしかできないのだと思います。

がんは憎たらしいけれど、大切なことを教えてくれたという意味で、感謝している部分もあるのです。これからも家族とともに、何があっても淡々と、そして明るく生きていきたいと思っています。

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