静的グイグイで店主に迫る女性客を見かけて

先日、友人が店主をしているビストロに立ち寄った時のこと。私のほかにもうひとり女性客がおり、彼女はどうやら店主をいたく気に入っているようだった。

彼女は静かに読書をしながらカウンターで食事をしていた。にもかかわらず、彼女が彼をロックオンしているのがビンビンと伝わってくる。

店主には長年の付き合いになる恋人がいる。女性客もそれを知っている。店主はにこやかに対応しているが、それ以上の気持ちがないことがハッキリとわかる態度。

にもかかわらず、この女性客は一貫して「だからなに?」という風情なのだ。隙あらばと獲物を狙って、ジーッと息をひそめているキツネのような感じ。鼻息荒い動的グイグイとは対極にある、静的グイグイと言えよう。

閉店間近になり、女性客が会計を頼んだ。私も次いで会計を済ませる。帰ろうかと荷物をまとめていると、女性客が怒濤のようにしゃべり始めた。なるほど、私を先に帰すための作戦だったのね。