ジェーン・スーさんが『婦人公論』に連載中のエッセイを配信。今月は「グイグイ」について。仕事でも恋愛でも、望みが薄い場にグイッと入って粘る「グイグイ」行動をすることなく歳を重ねてきたというスーさん。知り合いのビストロ店主に「グイグイ」と迫る女性を目の前にして感じたこととはーー。(文=ジェーン・スー イラスト=川原瑞丸)
グイグイいける人と、そうでない人
世の中には、なにごとにもグイグイいける人と、そうでない人がいる。私は後者だ。
グイグイ。私の定義では、明らかに望みが薄い場に文字通りグイッと入っていって、周囲の微妙な反応もおかまいなしに「私を選んで!」と粘れる行動のことだ。
グイグイいけない私の理由は、年を重ねて変わった。
昔はまったく自信がなく、少しでも旗色が悪ければ、仕事でも恋愛でもすぐに怖気づいた。簡単にはあきらめられないくせに、「やっぱり私じゃダメか……」と、うじうじ立ち止まるばかりだった。
年を重ね、健やかな自尊感情を保てるようになると、仕事では「ご縁があれば巡ってくるはずだ」とに構えられるようになった。
恋愛では相性が良い人をおおよそ見分けられるようになり、下衆(げす)な言い方をすれば打率が上がった。要は、グイグイいかずともなんとかなるようになったのだ。