一度もグイグイしないままいい年になってしまった

後日、女友達と連れ立って再び店を訪れると、あの夜は彼女が粘りに粘り、店を閉められたのは朝方だったと店主が言う。なんという災難。ハラスメントの域だ。

どれだけ自信があるのかしらと皮肉を言うと、店主は首を横に振り「ああ見えて、自信がないんですよ」とため息混じりに言う。彼女は店主と真剣に付き合いたいわけではないらしい。遊び相手を探しているだけで、そういうことを繰り返しているのだそうだ。

私は、腰が抜けるほど驚いた。

性的に求められると差し出してしまう人の自尊感情が低いのは理解の範疇だが、求められぬ場で自分を選べと居座り続ける胆力は、よほど自信がある人しか持てないと思っていたから。

同席した女友達によると、彼女の知人にもグイグイできる女性がおり、曰く、黙っていても誘われない女こそ、グイグイいくべきだと思っているそうだ。確かに、仕事でそういう人がチャンスをものにするのを見たことがある。

グイグイ行動が健全なのか否かはわからない。しかし、結局は自分をうまくなだめただけで、一度もグイグイしないままいい年になってしまったことを情けなくも思う。気力体力的に、これから先は無理だろう。恥も外聞もなく、望み薄の場で粘りに粘るグイグイ、一度くらいやってもよかったかも。


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年齢を重ねただけで、誰もがしなやかな大人の女になれるわけじゃない。思ってた未来とは違うけど、これはこれで、いい感じ。「私の私による私のためのオバさん宣言」「ありもの恨み」……疲れた心にじんわりしみるエッセイ66篇