「死なないでね」なんて言い出したから

内田:“いつか死ぬ”じゃなくて“いつでも死ねる”となったとき、まだ18歳にも満たないような子どもたちが命を絶っていることに――そしてこれはたぶん、自分で孫や子どもを持って、命の尊さみたいなものが身をもってわかったからこそ――こんなに理不尽な、もったいないことはない、と思ったのではないでしょうか。だから、がんもなく健康な状況だったらここまで響かなかったかもしれないですね。

『9月1日 母からのバトン』(著:樹木希林、内田也哉子/ポプラ社)

石井:そういうことだったんですね。最後の1か月で何度も……。

内田:(9月15日に亡くなるまで)3回は危篤状態になりましたね。

そんなヨレヨレの9月1日に、「死なないでね、死なないでね」なんて言い出すから、頭がおかしくなっちゃったのかと思ったんだけど、とんでもなかった。「今日は、子どもたちが大勢、自殺してしまう日なの」と説明してくれたんです。

それぞれの魂に向かって話しかけているようでした。

「年を取れば、必ずがんとか脳卒中とか心臓病とかで死ねるんだから。無理して死なないでいい」と生前に言っていたようですが、まさにそれがひしひしと感じられたんでしょうね。