窓をガラリ、「寄っていけよ」
伊東さんが20代のころ、軽演劇は全盛期だった。浅草には渥美清、新宿にはのちに伊東さんと深く関わる石井がいた。
――浅草にはストリップ劇場が4軒あって、ショーの合間に渥美さんや八波むと志さん、谷幹一さん、関敬六さんがコントをやる。それを梯子して観て歩いてて、でも私は新宿のフランス座に出てた石井均さんのスピードのある芝居が好きだったんで、そっちへよく行くようになった。私はいつも決まった所に座ってたんで舞台から目立つわけですよ。
ある日、楽屋の横の階段を降りて帰ろうとしたら、窓がガラッとあいて、「寄っていけよ」って石井さんが。それから楽屋に入りびたり。あるとき、「やってみるか?」って言われてその気になって。
それまで生協で働いて月7000円くらいもらってたのが、この世界に入ったら4000円になっちゃった。でも、もらえただけでもすごいですよ。座長のポケットマネーですからね。だからまあ、窓をガラリ、「寄っていけよ」が第二の転機ですね。