マンハッタンの自宅のすぐそば 真冬に渡米したので異常に寒い

残るは息子の学校と…

次は、私の母だ。母は80歳を超えている。父と兄が10数年前に亡くなり、母にとって私が一番身近な家族だ。置いてきぼりにされると思われたら困るので、一応聞いてみた。「一緒にニューヨークにいきませんか?」彼女の回答は否。「こんなおばあさんで、もう行きたくない。あなたは自分の道を生きなさい」うちの母は意外に強い人だ。そういえば、子どものころから、私がしたいと言ったことにダメと言われたことは一度もない。母の愛に感謝だ。

最後の砦となったのは息子。彼は手強かった。まず、母の慈愛をたっぷり込めて「ママは勉強のためにニューヨークに行きたいの。君も一緒に来てくれますか?」と聞いた。最初は、怪訝な顔で、それは決定なの?と聞き返された。私は、夫に説明したように英語を話せるようになるには10歳までに海外体験が必要と一生懸命伝えたが、息子にはまったく効き目がない。友達と離れたくないし、コロナで死ぬかもしれない外国になぜ、行かねばならないのか?というようなことをやんわりと、しかし強めに言われた。

そうだよね、ママの勝手ですよ。息子のため、と言っても、もともとは自分のためなのだから。完全に見透かされている。そこからは持久戦だ。コロナで学校がリモートになり、一緒に過ごす時間が多かった2020年。私は朝に晩にニューヨークのメリットを話した。おさるのジョージも住んでいるとか、スパイダーマンもいるとか。そのうち根負けしたのか、ある日、「ママとパパが決めたのなら、僕も行くしかないよ」と、半ば諦めにも似た同意を得た。

留学を思い立ってから、いくつも大変なことがあったが、息子の同意を得るのが一番大変だった。最後は粘り勝ちだ。息子よ、ありがとう。