思えば私はそれまで利き手ではない左手の役割を軽んじていたのかもしれない。左手くらい動かなくてもたいして支障はないだろうと。

ところがどっこい、字を書こうにも左手が紙を支えないとうまく書けないのだ。あるいは左手で歯ブラシを持ち、右手でチューブを絞らないと歯磨きというものは出来ないし、髪を乾かすにもどちらかの手でドライヤーを握り、残りの手で髪をくしゃくしゃと動かさねばならない。化粧も左手でホールドしたパレットから右手に持った筆で色を取ったり、まぶたを左手で持ち上げるから右手でコンタクトレンズが入れられるのだとわかったりした。

右手が痒くてたまらない時はどうにもならないのでその部分を歯で噛んだりしたし、食事の時は箸やスプーンは使えるのだが食器を支えられないのでどんどん首が前にせり出すことになり、自分は犬に近づいているのだと思った。

しかしどこにも痛みがなく手足が悪いわけでもないのに、細い血管がちょっと詰まっただけでなんでこんな不自由なことになるのだろう。

しかも血管は1ヵ所が詰まるとそこを血が通れないので交通渋滞のようになり、他が連鎖して詰まることも多い。倒れてから2週間がヤマで、また脳梗塞を起こしたら寝たきりになることもありうるらしい。

動くほうの手には、少しでも体におかしなことがあるとアラームが鳴る点滴を3つもぶら下げ、理不尽というかひどい目に遭っているなあという気持ちでスマホを見ていたら、脳梗塞の再発可能性は1年以内で35%、10年以内で50%、という記事を見つけ暗澹たる気持ちにもなった。