シャルル=モーリス・ド・タレーラン=ペリゴール
(画像:"Ch. [Charles] Maurice de Talleyrand." The New York Public Library Digital Collections.

聡明な頭脳と卓越した行動力をもった三大外交家

『歴史に残る外交三賢人』として採り上げるビスマルク、タレーラン、ドゴールは、国際政治におけるバランス・オブ・パワーの維持を目的として、自国の外交政策と軍事政策を運営した人物である。彼らは個性的でダイナミックな人であり、知的・文化的にも洗練されていた。三人とも頭が良くて討論能力に長けており、しかも深い思考力を持つ人物であった。

彼らはしばしば同時代の「思想の潮流」や「圧倒的な世論」や「既成の政治勢力」に対抗して、バランス・オブ・パワー外交を実践するために孤立を恐れず奮闘した勇敢な外交家であった。

これら三人のうちで、最もエンターテインメント・ヴァリュー(娯楽的な価値)が高いのは、タレーランであろう。ヨーロッパには、ピカレスク・ロマン(悪漢小説)と呼ばれる文学のジャンルがある。唖然とするような悪事をしでかす悪者を主人公として、その人物の大成功と大失敗を描く波瀾万丈の物語である。

タレーランも、スリル満点で波瀾万丈の人生を送った悪人であった。彼は、自分が悪党であることを世間から非難されても平然としていた。そのような「悪辣な政治家」が、ナポレオン戦争後の混乱した敗戦国フランスを救うために大胆な忠国外交を実行したという史実が、まるでピカレスク・ロマンのように面白いのである。