日本が学べる教訓

冷戦後のアメリカ外交は、顕著な失敗を繰り返して国際的な支配力を失ってきた。しかも日本周囲の三独裁国(中国・ロシア・北朝鮮)は、日本とアメリカをターゲットとする核ミサイルを着々と増産してきた。

しかし日本の親米保守・護憲左翼の両陣営は、何時まで経っても1960年代と何も変わらぬ「対米依存ごっこ」、「非核三原則ごっこ」、「護憲ごっこ」を続けるだけである。

このように知的に停滞した日本を観察すると、筆者は、「ドゴール大統領の「アメリカの保護に依存しようとする国は、”自国の運命を自分で決める”という責任感を失ってしまう。そのような国家は、知的・精神的な不毛国家となる」という指摘は、100%正しかったのだ」と感じざるを得ない。我々日本人が、ドゴールの外交思想と国家哲学から学べる教訓は多いのである。

 

※本稿は、『歴史に残る外交三賢人――ビスマルク、タレーラン、ドゴール』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。


歴史に残る外交三賢人 ビスマルク、タレーラン、ドゴール』(著:伊藤貫/中公新書ラクレ)

冷戦後のアメリカ政府の一極覇権戦略は破綻した。日本周囲の三独裁国(中国・ロシア・北朝鮮)は核ミサイルを増産し、インド、イラン、サウジアラビア、トルコが勢力を拡大している。歴史上、多極構造の世界を安定させるため、諸国はバランス・オブ・パワーの維持に努めてきた。19世紀後半の欧州外交を支配したビスマルク、俊英外相タレーラン、哲人政治家ドゴール。聡明な頭脳とパワーをもち合わせた三賢人が実践した「リアリズム外交」は、国際政治学で最も賢明な戦略論であり、日本が冷酷な世界を生き抜く鍵となる。