歴史はバランス・オブ・パワーで動いてきた

17世紀後半期と19世紀初頭には、ルイ14世とナポレオン皇帝が君臨するフランス帝国が巨大になりすぎたため、英墺普露西が連携してフランスをカウンター・バランスした。そして20世紀の前半期には、ドイツと日本の勢力圏拡大政策が英仏米露4ヵ国の連携によって阻止されている。

21世紀になった現在でも、習近平の中国とプーチンのロシアが、アメリカによる世界支配政策(アメリカによる国際構造の一極化)を阻止しようとして軍事的・外交的に連携している。中露は、正式の軍事同盟関係に入ったわけではない。

しかし両国とも、アメリカによる中近東支配・東アジア支配・国際金融支配・通商体制支配・宇宙支配・情報産業支配を切り崩そうとして、必死に闘っている。さらに中露だけでなく、インド、パキスタン、イラン、トルコ、シリア、ハンガリー、チェコ、ポーランド、イタリア、ドイツ、フランス等においても、冷戦後のアメリカが推進してきた世界一極化戦略に反撥して、国際政治と国際経済を多極化しようとする政治勢力が顕在化してきた。

「国際政治において最も強力な覇権国をカウンター・バランスして、勢力均衡の状態を作ろうとする」というリアリズム外交のパターンは、古代ギリシャから現在までの25世紀間、基本的に変わっていないのである。