彼女はあきらめなかった
しかし、アメリカで生まれようが移民だろうが、人種差別は絶えない。加えて、彼女は女だ。女に生まれただけで正しく扱われないことばかりなのは、アメリカもご多分に漏れず。ダンサーからキャリアをスタートし、俳優や歌手として活動の場を広げたが、明るく親しみやすいキャラクターが諸刃の剣となったか、どれだけヒットを飛ばしても表現者としてまともに評価されない時期が長く続いた。
それでもめげないのがジェニファー・ロペスだ。恋愛沙汰ばかりが取り上げられ、トーク番組では歌や演技が下手だとギャグのネタにされ、正直に言えば私もそれを笑ったことがある。しかし、彼女はあきらめなかった。今作でも、「彼女は自分がそういう扱いを受けることは予期していた」と他者に語られる場面がある。なんと痛切な覚悟だろう。
いや、そう言っては彼女に失礼か。切磋琢磨の末、彼女は自らが出演する女性のエンパワメント映画『ハスラーズ』のプロデューサーになり、ゴールデングローブ賞では最優秀助演女優賞にノミネートされるほどに成功した。しかし、アカデミー賞ではノミネートすらされなかった。闘いは続く。