努力と行動に裏打ちされたあきらめの悪さの、なんと美しいことよ
21年にはバイデン大統領の就任式にて移民にルーツを持つ有色アメリカ人を讃えるように「我が祖国」を歌い、名実ともにラテン系アメリカ人エンターテイナーの頂点に立った。笑われても無視されても、一歩一歩山を登ってきた結果だ。努力の積み重ねを集大成として映像で観ると、胸に迫るものがあった。歌い、踊り、演じ、彼女は自身と観客を鼓舞する。不当な扱いにNOを突き付ける。
1980年代後半からキャリアを始め、現在53歳。親しみやすさを保ったまま、誰にも真似できぬ鍛えぬいた肉体と精神で、彼女は自分にとって大事なことをどう表現するかに命を懸け続けている。
「あきらめない」と嘯くだけなら誰にでもできる。自戒の念を込めて言えば、その台詞が思考停止とサボりの言い訳にすらなる。そこに現在進行形の行動が伴わなければ、単なる発語だけになってしまうのだから。
その点、ジェニファー・ロペスは本物だ。たゆまぬ努力と行動に裏打ちされたあきらめの悪さの、なんと美しいことよ。万人が真似できることだとは思っていない。それでも、こういう人がひとりでもいるのは心強い。彼女は全身全霊で「私にできたのだからあなたにもできる」と伝えてくる。エンターテインメントは、こういう人に支えられている。
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