「いちドラマーがバンドのイニシアティブを握り、ステージでもメディアにおいてもメンバーの誰よりも目立っているバンドなんて、世界中どこを探してもXだけだろう」(写真提供:Photo AC)
90年代に入った頃から、バンドやミュージシャンの様式を指す言葉として広まったと言われる『ヴィジュアル系』。90年代後半にLUNA SEA、GLAY、SHAZNAらが人気を博したことで、より一般化したとされます。一方「日本のロックシーンはヴィジュアル系を軸に発展してきたと言っても大袈裟ではない」と話すのが音楽ライターで音楽制作ディレクターを務める冬将軍さんです。特にヴィジュアル系の“レジェンド”BUCKTICKとXがシーンに与えた影響は絶大だったそうで――。

BUCK-TICKによる“黒服系”の確立

BOOWY(※2つ目のOはストローク符号付きが正式)の正統後継者というべく、シーンに登場したBUCK-TICK。

ニューウェイヴに傾向し始めた『INSTANT LOVE』(1983年9月)の頃のBOOWYを深化させたような音楽性とビジュアルで1987年にメジャーデビュー。地球の重力を完全に無視して立てられた髪の毛と、美麗なルックスで登場した5人は「重低音がバクチクする。」というオーディオ機器のテレビCMとともに世の中に衝撃を与えた。

作品を重ねるごとにダークさを増していく音楽性と同様にビジュアルも妖艶さを増す。

アルバム『悪の華』(1990年2月)で打ち出したゴシックでデカダンスな世界観は、逆毛を下ろし黒髪ロングのスタイルで低音ボーカルを響かせる櫻井敦司とともに、現在までのBUCK-TICKが持つバンドカラーを決定づけた。同時に“黒”をイメージづけた。それはBOOWY をよりダークにしたロックバンドのアイコンだった。

90年代ヴィジュアル系黎明期を象徴する、いわゆる“黒服系”の確立である。