Xはなぜ絶対的な存在になったのか
BUCK-TICKが切り拓いた黒服系の流れは、黒夢やcali≠gariをはじめとし、00年代に入ってもMUCC、メリーなど、系譜として脈々と引き継がれていくが、Xには正統なフォロワーがいなかった。
自身のレーベル「エクスタシーレコード」の弟分、後輩たちを見てもTOKYO YANKEESはスラッシュメタル、LADIES ROOMはアメリカンハードロック、ZI:KILLやLUNA SEAは黒服であり、正直エクスタシーよりもBUCK-TICKと並んでいるほうがしっくりくる。
しかし、Xはそうしたバラバラの音楽性を持つバンドを統率することによって絶対的な存在となったといえる。“無敵”を以てすればなんでもあり、ということを証明した。
ヴィジュアル系が特定の音楽ジャンルや様式美ではなく、さまざまな多様性を見せるようになったのは、こうしたXと自由闊達なエクスタシーレコードの存在が起爆剤になったともいえるだろう。
今でこそ、ヴィジュアル系のレジェンドとしてその名前が並ぶことの多いBUCK-TICKとXであるが、音楽性もビジュアルもまったく異なる両バンドに接点はなく、ファンも被っていなかった。
しかし90年代に入ると思わぬ共通項が生まれた。今井寿とhideという、奇才というべき2人のギタリストである。
プレイスタイルもファッションもまったく異なる2人だが常軌を逸した感性と変態的ともいえる突飛な音楽センスはお互いを惹き合わせていき、同時に2人に魅せられたファンも増えていった。
※本稿は、『知られざるヴィジュアル系バンドの世界』(星海社新書)の一部を再編集したものです。
『知られざるヴィジュアル系バンドの世界』(著:冬将軍/星海社新書)
ヴィジュアル系とは音楽ジャンルを指す言葉ではない! 日本のロックシーンは「ヴィジュアル系」を軸に発展してきた、と言い切ってしまっても大袈裟ではない。本書では90年代にヴィジュアル系がどう誕生して、多くの人になぜ受け入れられ、なぜ世界がうらやむほどの「ジャパンカルチャー」となったのか、その独自の発展をバンドの世界に留まらず、ファッション、漫画などさまざまな分野を通して辿っていく。さあ、その深淵の闇へ、共に堕ちていこう!