古代オリンピックの精神
オリンピックの起源は、2800年前の古代ギリシャに遡ります。
もともとは神に奉納する神事としての競技会で、戦争に明け暮れる人間たちへの神の怒りを鎮め、蔓延していた疫病を退散させるための祈りでもありました。戦わずにはいられない人間という生物にとって、運動競技は命を無駄遣いしないための工夫であり、代償的イベントでもありました。
だからこそ開催期間中は前後を含め、戦闘は一切禁止された。選手たちは一糸まとわぬ真っ裸で、まさに武器を捨てて肉体だけで競っていました。
その平和の祭典での競技の目的は、徳や名誉をも意味する「アレテー(真理)」を得るためです。観客はアレテーを極める選手たちの姿に熱狂したのです。
開催地のオリンピアは、神殿だけが建っているような自然豊かな場所でした。オリンピック開催時のみ人が集まり、テントで寝泊まりする人もいたとか。キャンプ大会と音楽フェスが一緒になったかの様相だったようです。現代の感覚で言うと、"ジャンボリー形式のウッドストック"といったところでしょうか。
この古代オリンピックの精神を復興し、世界平和のための祭典をつくろうと始まったのが、近代オリンピックです。ただし現代の在り様は、オリンピズムを提唱したクーベルタン男爵が想像もしなかった域に及んでいるように思います。