なぜ人々はこれだけ運動競技に熱狂するのか

私は今年(2022年)の夏まで『オリンピア・キュクロス』という漫画を連載していました。

古代ギリシャで壺絵師見習いをしていた青年が、1964年のオリンピックに沸く東京にタイムスリップするという設定で、構想を練るためにオリンピックのリサーチを様々に行いました。

描き始めたきっかけは、「なぜ人々はこれだけ運動競技に熱狂するのか」という理由を知りたかったからです。

小さな頃から運動が好きではなく、家族にも運動好きな人がいなかったのもあり、私にはスポーツを観戦する習慣がありませんでした。

コロナ禍の東京で(撮影:山崎デルス)

ただ、四六時中木によじ登ったり、野山を駆け回ったりしていましたので、走るのがめちゃくちゃ速い、身体能力の発達した子どもだったのです。

そのため小学校でも中学校でも、運動競技会があれば必ず選手になり、「学校のために頑張ってくれ」と参加させられていました。しかし、一列に並んで勝った負けたのために走り、優劣をつけられることが、吐き気をもよおすほど嫌だったのです。

なぜこんなことで競わなきゃならず、自分の好きなように好きな方向へ走ることの何がいけないのだろうと、ずっと考えていました。『オリンピア・キュクロス』の主人公デメトリオスには、私のそんな思いも投影されています。