急ピッチで進められた新国立競技場の建設風景。今オリンピックを振り返ってヤマザキさんが思うこととは(写真提供:photoAC)
「旅する漫画家」として世界を駆けてきたヤマザキマリさん。コロナ禍ではイタリアにいる家族と離れ、日本に長期滞在することになりました。しかしマリさんいわく、思いがけなく移動の自由を奪われた毎日の中でむしろ考える機会が増え、多くの気づきや発見もあったそうです。特に緊急事態宣言下にあった東京で開催されたオリンピックについては、いろいろ思うところがあったそうで――。

強引さのもとで開催された東京オリンピック

パンデミックが進行する最中に、世界中から人々を一地域に招集してオリンピック、パラリンピックを開催。

古代ギリシャ人もびっくりするだろう事象が、2021年の夏、緊急事態宣言下の東京で遂行されました。コロナ禍の日本での象徴的な出来事として、振り返っておきたいと思います。

何が何でも開催しなければなりません。安全と安心には気をつけます。

開催前、政府から発せられるアナウンスは、結局その一点張りでした。パンデミックを押して開催しなければならない説得力のある理由は述べられず、絶対に実施されなければならない、という強引さのもとで、議論が尽くされることもありませんでした。

その一連の流れを見ていて私が感じたのは、第二次世界大戦に日本が介入した際も同じような状況だったのではということです。

有無を言わさず突撃を開始し、民衆は真相を知らないままで竹槍を持って、「突け!」と号令されれば従う。より記憶の新しいところでは、福島第一原発事故時の対応にも共通するものがあった気がします。