「悪い人」の基準を見つめなおして

「今日のような時世では、臣下の私的な悪事を除いて公的な法に従わせることができれば、人民も安らかになって国もよく治まり、臣下の私的な行動を除いて公的な法を行わせることができれば、軍隊も強くなって敵は弱くなる」と韓非子は言います。

「法に反することが悪いこと」という、非常に明快な態度を韓非子は示しているのです。逆に、そうでもしなければ、多くの人が情に流されてしまうことを見抜いていたのかも知れません。

あなたが誰かを「悪い人」と判断する場合、「なぜその人を悪いと思うのか」という答えは、自らの内にあると考えてみてはいかがでしょうか。

韓非
生没年不明。中国の戦国時代の思想家。文筆家。韓の国の公子として生まれた。師は荀子で、のちに秦の始皇帝の右腕となる李斯とともに学んだ。師の教えを受け継ぎ、現実に即した思想や政治が「正しい」と考えた。当時の儒者が主導する政治では、弁論で法律が都合よく歪められてしまうと批判し、戦乱の世の中に必要なのは確固たる法律だと主張した。李斯は始皇帝への進言の際に韓非の書の引用を多く用いた。始皇帝もその思想を気に入っており家臣へ迎えようとするが、韓非は侵略を恐れた韓の王と始皇帝の板挟みになる。ついには、知性が脅威になるとみなされ、李斯の策略により牢獄で服毒死した。

※本稿は、『半径3メートルの倫理』(産業編集センター)の一部を再編集したものです。

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半径3メートルの倫理』(著:オギリマサホ/産業編集センター)

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