人間は打算的

あなたに限らず、人間の判断というものは、えてして打算的なものです。こうした人間の利己的側面を強調し、そのような性質を持つ人々を治めていくための方策を考えた人が、古代中国の思想家・韓非子でした。

(イラスト:オギリマサホ)

彼は人間がいかに打算的な存在かを、鰻と蚕を例に挙げて説きます。鰻や蚕はヌルヌル、ブヨブヨしていて、本当であれば触りたくないものでしょう。しかし鰻も蚕も利益になるがゆえに、人は平気でそれを掴もうとするのだと韓非子は指摘しました。

このような打算的な人々を統治するために、韓非子は客観的な規範である法を制定し、それを厳密に適用することを主張しました。「悪い」の基準を、「法に違反すること」に絞ったのです。

先に挙げたように、人間はどうしても自分によくしてくれる人を「いい人」と思ってしまいがちです。しかし韓非子の時代、君主にとって都合のいいことばかり言う臣下が必ずしもいい臣下とは限らず、陰でとんでもない悪事をもくろんでいることもあります。