「《怪談説法》を、27年経ってもなお続けているのは、この世には目に見えない世界があることを皆さんに伝えたいからです。」(写真提供:三木さん)
怪談を切り口に仏教の教えが学べる「怪談説法」が人気の三木大雲さん。見えない世界を知ることには意味があるといいます。(構成=丸山あかね 写真提供=三木さん)

「ペタペタペタ」背後から音が……

京都市にある光照山蓮久寺(れんきゅうじ)住職の三木大雲と申します。私は、僧職のかたわら、怪談の語り部としてメディアに出演してきました。そのため、「怪談和尚」と呼ばれることもございます。

怪談を語り始めたのは、23歳の時。仏教系の大学を卒業したものの、寺の次男に生まれた私には、継ぐお寺はありませんでした。思いついたのが夜の公園で布教を行うこと。仏の教えを説くだけでは興味を持ってくれませんので、怪談話を糸口にすることにしました。すると、公園にたむろしていた若者や暴走族の子が面白がって私の周囲に寄ってきてくれたのです。

そうして始まった「怪談説法」を、27年経ってもなお続けているのは、この世には目に見えない世界があることを皆さんに伝えたいからです。

私自身、不可思議な出来事にたびたび遭遇しています。

9歳の夏の夜、実家の寺で寝ていた私は、ふと何者かの気配を感じて眠りから覚めました。目を開けると、人のような影が私の布団のまわりをグルグルと回っている。なんだろうと思っていると突然、誰かが耳元で囁きました。

「あし、ちょうだい」

咄嗟に「嫌だ!」と叫んだ瞬間、両足首を何者かの冷たい手でギュッと掴まれてズルズルッと引っ張られました。驚いて足元を見たけれど誰もいない。これが初めての心霊体験でした。

また、修行をしていたお寺で、先輩の僧侶と夜の見回りをしていた時のこと。背後から「ペタペタペタ」という音が聞こえてくる。振り返っても誰もいないので、懐中電灯で床を照らしてギョッとしました。髪の長い、血だらけの女性がこちらを見上げていたのです。手足がバキバキに折れ曲がった姿で、必死にこちらへ進んでくる……。先輩と私は走って部屋に帰り、朝までお経を唱え続けました。

翌日、お寺でお葬式があり、葬儀屋さんが運んできた遺影に驚愕。まさに昨夜の女性だったからです。お葬式を前に当人がお寺に挨拶をしにきたのかもしれません。