「人間は変われるのだ」と感動

初日の幕内の相撲に入り、前頭15枚目・照強が前頭14枚目・豊山を迫力あるかいなひねりで倒し、マスクをした観客たちが「ワーッ」と歓声をあげたのを聞いたとたんに、私は目が覚めたように気合いが入った。

続いて、前頭14枚目・千代翔馬と前頭13枚目王鵬が投げの打ち合いをした。同時に頭から落ちて物言いがついたが、千代翔馬の髷が一瞬早く土俵に付き、王鵬が勝った。その後、前頭6枚目・若元春が前頭5枚目・佐田の海を逆転でうっちゃる姿をみて、私の鬱々気分がどんどん遠のいてきた。

そして、11月には38歳になる前頭3枚目・玉鷲は、仕切り線の上に着いた拳が前にはみ出し、行司に「さがって、さがって」と注意されるほどの勢いで、大関への期待がかかる23歳の新関脇・豊昇龍を押し倒した。玉鷲の力に、「年取るとあちこち痛いなあ。この先暗いなあ」と嘆いていた自分の気持ちがぶっ飛んだ。

さらに、御嶽海が前頭筆頭・翠富士を押し出し、カド番の危機から先場所10勝をあげた大関・正代が別人のような迫力で前頭筆頭・翔猿を押し出す姿を見て、「人間は変われるのだ」と感動した。正代はあと一押しするために手を出したが、翔猿が土俵を出たので、ダメ押しをしなかった。この手の止め方は美しかった。今後、この感動と期待を裏切らないで欲しい。

大関・貴景勝が逸ノ城に負けたのは残念だったが、「明日から頑張れば良い」と前向きに応援できるようになった。

結びの照ノ富士は、小結・霧馬山と廻しの取り合い合戦をしたのち勝利した。

初日の相撲を見たことにより、私の相撲から人生を学ぶ「感動相撲体質」は復活し、夏バテと秋落ち状態は消え失せ、夜の虫の声も明るく聞こえるようになった。

「大相撲の力は素晴らしい」と、あらためて感じた。

ファンがガラス越しに稽古を見ているのをインターネットで見ていたが、この日は午後で稽古が行われておらず残念だった

 

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