私はいまどこへ行こうとしているのか

トッケビが時空を超えて深遠な世界を行ったり来たりする魂だとすれば、コン・ユもまた、芸能の世界で苦しみながらも自分の存在に永遠の魂を注ぎこもうとするトッケビに思えてくる。しかもまた、このトッケビは未だ自分の正体をつかめないでいる。

それでいい。

迷いながらも、コン・ユは今後も作品を通して自分が「トッケビの1人」であることを見せてくれるに違いない。

「『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』オリジナルサウンドトラック(DVD付)」(ポニーキャニオン)

 

2017年5月に行なわれた百想芸術大賞の授賞式でコン・ユはテレビ部門の男性最優秀演技賞に輝いた。

そのときのコメントが印象的だった。

「この場に立つのが怖かったのです。いろいろな人生を生きてきましたが、いまは混乱しています」

「私がどこにいて、私が誰なのか、私はいまどこへ行こうとしているのか……」

まるで「迷える小羊」になったかのようなコン・ユの言葉。晴れの授賞式にふさわしくないかもしれないが、自分を飾らずありのままに表現するのがコン・ユらしい。

そんな彼は、40代になった2019年に2つの映画に出演した。

1つは、韓国で100万部以上も売れた大ベストセラーの『82年生まれ、キム・ジヨン』を原作とした映画だ。コン・ユが女性主人公の夫を演じた。

もう1つは『SEOBOK/ソボク』(公開は2021年)。この映画はクローン人間を題材にした作品で、コン・ユは国家機関の元エージェントに扮した。

寡作な彼なのに、急に活動的になった。