「間の取り方」を日で変える舞台の魅力

舞台には、名前のない役があったとしても、名前を呼ばれない俳優は存在しない。舞台に立てば、どんな人間も、必ずお客さんの目に触れる。

『余白』(著:岸井ゆきの/NHK出版)

同じ脚本を同じように演じているはずなのに、回によって客席に笑いが起きたり起きなかったりするのも、テレビや映画にはないおもしろさだった。

その差について「何が違うかわかる?」と聞いてきたのは、『墓場、女子高生』という舞台を演出していた、劇団ピチチ5(クインテット)の福原充則さんだった。

わからない、と素直に答えると、福原さんは、わずかでも間の取り方が違うだけで伝わり方が変わるのだ、ということを教えてくれた。日によってお客さんの状況も必ず変わる。

今日のお客さんの感情の目盛りと、私が表現することの目盛りをうまくあわせることができたら、客席は必ず湧くのだと。