「俳優になりたいとみずから思うようになったきっかけはとある舞台のオーディションだった」(提供:『余白』より)
映画、ドラマ、舞台などで異彩を放つ、今大注目の女優、岸井ゆきの。2017年、映画『おじいちゃん、死んじゃったって。』で初主演、2019年、主演映画『愛がなんだ』では、第11回TAMA映画賞・最優秀新進女優賞を受賞。演技力が高いと評判の岸井さん、しかし、事務所に所属したばかりの頃は、先が見えない暗い未来だったそうで――。

運命のオーディション

誘われるがまま芸能事務所に入ることを決めたのは、私を救い続けてくれた映画をつくる人たちの一員に自分もなれる可能性があるのだと知ったからだ。

それが、先の見えなかった暗い未来に、ぽっと灯りがともったような気持ちにさせてくれた。

とはいえ、いざ所属してみたら仕事もなく、本当にこれが自分のやりたいことなのかどうかもわからず、しばらく暗中模索の日々を過ごしていた私が、俳優になりたいとみずから思うようになったきっかけはとある舞台のオーディションだった。

それは、一週間のワークショップに参加している姿を見ながら、出演者を決めるというものだったのだけど、これがまあ、なんともおもしろかったのだ。

演じることというよりも、演劇がどんなふうにつくられているのかをはじめて知れたことが、私にとっては新鮮だった。