(写真提供:Photo AC)

兄は3年前から要介護2の認定を受けていたのだが、当時は認知症か、脳梗塞の後遺症による衰えか、判然としない面が多かった。それが母の死後、明らかに認知症が進んだのがわかった。

まず、話の筋道が理解できないことが多くなった。同時に、道理に合わない言動が増えてきた。記憶力はほとんど絶望的で、10秒前に言われたことさえ覚えていられない。

昨年末、兄の知己の自動車ディーラーに「前に車を売った代金が振り込まれていない。弁護士に相談する」と電話したそうで、相手から連絡をもらって愕然とした。車云々は兄が脳梗塞を発症する以前の話で、当時の兄がそんな不手際を看過するはずがない。長年商売をしているディーラーにしても、信用問題で大損する。

そのようなことを諄々と説明したのだが、その場は納得しても、数日後には「弁護士を探して話をつける」が始まる。兄の銀行の預金通帳を見つけて数字を突きつけたのだが、それでも納得しない。本当に、いい加減にしてほしいとうんざりした。